とある文豪と、その愛人がこの世を去った。

憂い多き人生の如く渦を巻く激流へと身を投げ...るよりも早く、
猛スピードで突っ込んできた〝例のトラック〟によって。

文豪が目を覚ますとそこは、異世界の教会。
案内人は、慈愛に満ちた瞳で微笑みかける。

「ようこそ冒険者よ。あなたは選ばれ、転移したのです」

御多分に洩れず、勇者の使命を背負わされてしまう文豪。
だが、彼は転移者の誰もが与えられる〝あるもの〟を持たなかった......。

「...ふふ。恥の多い生涯だ」

この世でも、異世界(あの世)でも
<失格者>の烙印を押された文豪(センセー)の冒険が幕を開ける。

きっと、どこかにいるはずの「さっちゃん」を見つけ出し、
今度こそ、あの日の本懐——心中を遂げるために。